オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

自分で問題を作ってみたけれど...

おはこんばんにちは、よねすけです.
最近いろんな先生のホームページを見るのにはまっていて,そうしたら大体の先生が研究の事とかをブログに書いていることを知ったので,自分もこれからも続けていこうと思いました(なんの報告やねん).

この前授業始まる前に友達と喋ってたら,「問題出してや」って言われたから作った(?)のが下の問題

\displaystyle\sum_{n=1}^{2016}\sqrt{1+\frac{1}{n^2}+\frac{1}{(n+1)^2}}

この値を求めよっていう問題を出したけど自分と思ってたんと違う解き方をされてう〜〜ってなった.

自分の想定してた解答

\displaystyle 1+\frac{1}{n^2}+\frac{1}{(n+1)^2}=\frac{n^4+2n^3+3n^2+2n+1}{n^2(n+1)^2}=\frac{(n^2+n+1)^2}{n^2(n+1)^2}

となるから(!!),これをルートの中にぶち込んだら

\displaystyle
\begin{eqnarray}
\sum_{n=1}^{2016}\sqrt{1+\frac{1}{n^2}+\frac{1}{(n+1)^2}}&=&\sum_{n=1}^{2016}\frac{n^2+n+1}{n^2+n}\\
&=&\sum_{n=1}^{2016}\left(1+\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right)\\
&=&2016+\left\{\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{2}\right)+\cdots+\left(\frac{1}{2016}-\frac{1}{2017}\right)\right\}\\
&=&2017-\frac{1}{2017}
\end{eqnarray}

となって答えが出ました!!この解法のミソは

n^4+2n^3+3n^2+2n+1=(n^2+n+1)^2

因数分解が出来るか,ってところやったけど友達はn=1から順番に代入して実験的にこの式を得ていた...まあ実験するよな...って自分でも思ったけど笑

「高校生でも出来そうな問題やな」みたいな話をしてて,これを大学チックな問題に改良出来へんかなって思ってこれを一般のnまでの和にして先と同じことをしてやると,

\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\sqrt{1+\frac{1}{k^2}+\frac{1}{(k+1)^2}}=n+1-\frac{1}{n+1}

になるから十分大きなnでこの式はO(n)って事が分かるから,

\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\sum_{k=1}^{n}\sqrt{1+\frac{1}{k^2}+\frac{1}{(k+1)^2}}}{n}=1

っていう問題が出来たやん!!👍

って喜んでたんやけど,これどっかで見たことあるな...って思って

\displaystyle a_n:=\sqrt{1+\frac{1}{n^2}+\frac{1}{(n+1)^2}}

っておいてやると

\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_1+\cdots+a_n}{n}=\lim_{n\to\infty}a_n=1

ってなって一瞬で解けてまうやんけ...ってなりましたね(泣)

最後の式変形がわからない人は
otaku-of-suri.hatenablog.com
を見てください.

問題を作るのってこんなに難しいんか...って思った出来事でした.

それでは

判別式パート2

こんにちは,よねすけです.

少し前に三次方程式の判別式について長々と書きました.

otaku-of-suri.hatenablog.com

ところが,ある日高木貞治代数学講義を読んでいたら,

代数学講義 改訂新版

代数学講義 改訂新版

五次方程式の判別式の求め方をものすごく簡単に示していて目からウロコでした.今回は三次方程式の場合に高木先生の方法を一部用いて判別式を求めたいと思います.

三次方程式x^3+px+q=0に対して,判別式はp^mq^nのような項からなっていて,その次数の重さは6です.p,qの重さはそれぞれ2,3なので

2m+3n=6

という式が成り立ちます.これより(m,n)=(3,0),(0,2)です.よって判別式は

D=\lambda p^3+\mu q^2

が分かります.例えばp=0,q=-1\Leftrightarrow x^3-1=0を考えるとこの方程式の解は1,\omega,\omega^2なので判別式は

D=(1-\omega)^2(\omega-\omega^2)^2(\omega^2-1)^2=-27

になります.いまp=0,q=-1よりD=\muなので\mu=-27が分かりました.
p=-1,q=0\Leftrightarrow x^3-x=0を考えるとこの方程式の解は0,\pm 1なので判別式は

D=(0-1)^2(1-(-1))^2((-1)-0)^2=4

になります.いまp=-1,q=0よりD=-\lambdaなので\lambda=-4が分かりました.

以上より三次方程式x^3+px+q=0の判別式D

D=-4p^3-27q^2

が分かりました.

めちゃくちゃ簡単に出せましたね.前回の鬼の計算量とは比較になりません.高木先生の本には判別式と微分の関係を使って更に簡単に示していましたがこの方法でも十分に早いので良いと思います.気になった人はぜひ高木貞治代数学講義を手に取って見てみて下さい.

最近数学ばかりなので今度は物理のことを書きたい.黒体輻射のこととか.

それでは

チェザロ平均

こんにちは,よねすけです.

今回は数列のチェザロ平均というものついて書きたいと思います.
今までは数列(今回は複素数列を考える.)の級数が収束するというのは複素数列の級数

\displaystyle c_0+c_1+\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}c_k

について第n部分和s_n

\displaystyle s_n=\sum_{k=0}^{n}c_k

と定めたときに,\lim_{n\to\infty}s_n=sとなるならば,級数和はsに収束する,というふうに習ったと思います.この定義でいくと例えば

\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^k=1

などが分かりますね.しかし,この定義だと次のような級数に対して極限を持ちません.

\displaystyle 1-1+1-1+1-\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k

この場合は部分和の列が1,0,1,0,\cdotsとなるからです.しかし部分和が交互に1,0と現れるので希望としては1/2に収束してくれるといいなあ,って思いますよね??そこで次のような意味付けを与えてみましょう.

はじめのN個の部分和の平均をとって

\displaystyle\sigma_N=\frac{s_0+s_1+\cdots+s_{N-1}}{N}

とおいてみましょう.\sigma_Nを数列\{s_n\}の第Nチェザロ平均と呼ばれます.N\to\inftyのときに\{\sigma_N\}が普通の意味である複素数\sigmaに収束するときに,級数\sum_{k=0}^{\infty}c_k\sigmaチェザロ総和可能というふうに言います.

この定義で行くと先ほどの級数もきちんと1/2に収束することも確かめられますね.

しかし,少し問題があります.収束の意味をこのように押し広げたときにこれは果たして普通の意味で収束するときの値と一致するのでしょうか?なので次の事を確かめる必要があります.

普通の意味で収束する数列はチェザロ総和可能か??

これは真です.実際に確かめましょう.はじめと同じように数列\{c_n\}級数が普通の意味でsに収束するとしましょう.

\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n}c_k=\lim_{n\to\infty}s_n=s

このとき次が成り立つことは一回生の微積分でやりました(\varepsilon -\delta論法で示せます.).

\displaystyle\lim_{n\to\infty}s_n=s\Rightarrow\lim_{n\to\infty}\frac{s_0+s_1+\cdots+s_{n-1}}{n}=s

これよりこの級数sにチェザロ総和可能であることが分かりました.しかも収束値まで一致します.

それでは.

三角関数に関する不等式

こんにちは,よねすけです.

今回は三角関数に関する不等式を示したいとおもいます.三角形ABCの角A,角B,角Cについて

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

となります.これを面白い方法で示してみましましょう(受験数学では有名な手法なので読者の皆さんは知っていることかも知れませんが,,,).

f:id:otaku_of_suri:20161127201346p:plain

上のような図を書いてみました.y=\sin xの上に角A,角B,角Cを載せてみましょう.そうするとその3点から三角形が作られますが,[0,\pi]においてy=\sin xは凸関数なので三角形は正弦波はその下に潜り込む形になります.その三角形の重心Gを考えると三角形の重心は必ずその内部にあるのでy座標の大小を比較すれば以下の式が成立します.

\displaystyle \frac{\sin A+\sin B+\sin C}{3}\le \sin\left(\frac{A+B+C}{3}\right)

A,B,Cは三角形の角なのでA+B+C=\piなのでそれを代入すれば

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

が得られました.しかしこれは三角形の角がすべて異なるときにしか成り立ちません.二等辺三角形や正三角形の場合は別に考えないと行けません.正三角形の場合は等号が成立するので大丈夫です.二等辺三角形の場合は三角形が線分になりますが線分を2:1に分ける点と3点の平均となる点が一致するので同様に上の式が成り立つことが分かります.以上より

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

が示されました.またこの式から

\displaystyle\sin A\sin B\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{8}

も分かります.これは相加平均相乗平均に関する不等式を用いると

\displaystyle \frac{3\sqrt{3}}{2}\ge \sin A+\sin B+\sin C\ge 3\sqrt[3]{\sin A\sin B\sin C}

なので左辺と右辺を3で割り,3乗すると示されます.三角関数に関する不等式は色々な証明方法が知られているので面白いですね.

それでは.

楕円の極座標表示

こんにちは,よねすけです.
今回は楕円の極座標表示の方法について書いてみたいと思います.

f:id:otaku_of_suri:20161127171145p:plain

x^2/a^2+y^2/b^2=1(a\ge b>0)で表される楕円を書いてみました.このとき焦点はe=\sqrt{1-(b/a)^2}を用いて,F(ea,0),F'(-ea,0)と書けます。
このような楕円があったときに,極座標においての原点を点Fとして図のように考える点と原点との距離をr,始線(この場合x軸のx\ge ea)からの偏角\thetaとします.
(x,y)Aと名付け,三角形AFF'について考えます.余弦定理を用いると

(r')^2=r^2+(2ea)^2-2\times r\times 2ea\times\cos(\pi-\theta)

が分かります.また楕円の作図の仕方から

r+r'=2a

も分かります.この2式を連立させて解くと,

\displaystyle r=\frac{b^2}{a(1+e\cos\theta)}

が分かります.点Aの座標を極座標変換してそれを楕円の方程式に代入して,,,とやっていくよりは少しは計算量が減る気がします.

それでは.

面白い積分

こんにちは,よねすけです.
今回は最近目にした面白い積分について書きます.

\displaystyle I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{{\rm d}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}

タンジェントの肩に\sqrt{2}が乗っているので一瞬びっくりしてしまうのですが,これは実は見掛け倒しのもので別にe,\piでも何でも良いことが分かります.あ,あとこの積分は広義積分になりますが,きちんと収束するので安心して下さい.

実際に解きましょう.このIを求める前に,一旦x\mapsto y=\pi/2-xと変数変換されたI'を求めてみましょう.

\displaystyle
\begin{eqnarray}
I'&=&\int_{\frac{\pi}{2}}^0\frac{-{\rm d}y}{1+\frac{1}{\tan^{\sqrt{2}}y}}\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}y}{1+\tan^{\sqrt{2}}y}{\rm d}y\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x
\end{eqnarray}

I'Iに変数変換を施したものなので積分の値は変わりません.これを用いると

\displaystyle
\begin{eqnarray}
2I&=&I+I'\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{{\rm d}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}+\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}{\rm d}x\\
&=&\frac{\pi}{2}
\end{eqnarray}

が分かりました.以上より,

\displaystyle I=\frac{\pi}{4}

となります.こんな感じの変数変換を施して積分結果が得られるものとしてこれもありますね.

\displaystyle \int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^2 x{\rm d}x=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^2 x{\rm d}x=\frac{\pi}{4}

それでは

フェルマーの小定理の証明

こんにちは、よねすけです。
今回はフェルマーの小定理を二通りで証明したいと思います。

フェルマーの小定理とは、素数p\gcd(a,p)=1なる整数aを考えたとき、
\begin{equation}
a^{p-1}\equiv 1(mod\ p)
\end{equation}
証明には数学的帰納法を用いるものと群の性質を用いるものがあります。

まずは

n^p\equiv n(mod\ n)

となることをnに関する数学的帰納法で示しましょう。n=1の時は明らかなので、あるnでこの式が成立するとしましょう。
このとき二項展開の公式を用いて、
\displaystyle (n+1)^p\equiv \sum_{i=0}^{p}{}_pC_{i}n^i\equiv n^p+1+\sum_{i=1}^{p-1}{}_pC_{i}n^i(mod\ p)

いま1\leq i\leq p-1のとき、{}_pC_{i}pの倍数であることが知られています。なぜなら
\displaystyle {}_pC_i=\frac{p!}{i!(p-i)!}

と表されており、p!pの倍数である一方、i!,(p-i)!pの倍数で無いからです。以上より帰納法の仮定を用いれば
(n+1)^p\equiv n^p+1\equiv n+1(mod\ p)

となりn+1の場合も成り立つことが示されました。
npの倍数でないとき、すなわち\gcd(n,p)=1のときは両辺をnで割って
n^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

が示されました。

  • 群の性質を用いるもの

組み換え定理を用います。(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}を考えるならば、a\in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}によって以下の2つの集合が対等であることが分かります。

\{\overline{1},\overline{2},\cdots,\overline{p-1}\}=\{\overline{a},\overline{2a},\cdots,\overline{(p-1)a}\}

これを用いれば
(p-1)!\equiv a\times 2a\times\cdots\times (p-1)a\equiv a^{p-1}(p-1)!(mod\ p)

(p-1)!pの倍数でないので(ウィルソンの定理によると(p-1)!\equiv -1(mod\ p))、両辺を(p-1)!で割ると
a^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

が得られました。

どちらも簡潔な証明で素晴らしいですね。
それでは。