オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

二重級数

先日、塾講をしているときに出てきた問題が面白かったのでここに取り上げることにしました。

次の無限級数の和を求めよ。
\displaystyle\frac{1}{3}+\left(\frac{1}{3^2}+\frac{1}{3^3}\right)+\left(\frac{1}{3^3}+\frac{1}{3^4}+\frac{1}{3^5}\right)+\left(\frac{1}{3^4}+\frac{1}{3^5}+\frac{1}{3^6}+\frac{1}{3^7}\right)+\cdots

まずは普通に解いてみましょう。

\displaystyle\underbrace{\frac{1}{3}}_{a_1}+\underbrace{\left(\frac{1}{3^2}+\frac{1}{3^3}\right)}_{a_2}+\underbrace{\left(\frac{1}{3^3}+\frac{1}{3^4}+\frac{1}{3^5}\right)}_{a_3}+\underbrace{\left(\frac{1}{3^4}+\frac{1}{3^5}+\frac{1}{3^6}+\frac{1}{3^7}\right)}_{a_4}+\cdots

とおいてみると、a_nは次のようになります。
\displaystyle\begin{align}
a_n&=\frac{1}{3^n}+\frac{1}{3^{n+1}}+\cdots+\frac{1}{3^{2n-1}}\\
&=\left(1+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{3^{2n-1}}\right)-\left(1+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{3^{n-1}}\right)\\
&=\frac{1-\left(\frac{1}{3}\right)^{2n}}{1-\frac{1}{3}}-\frac{1-\left(\frac{1}{3}\right)^{n}}{1-\frac{1}{3}}\\
&=\frac{3}{2}\left(\frac{1}{3^n}-\frac{1}{9^n}\right)
\end{align}

これより上の無限級数の部分和S_n=\sum_{k=1}^{n}a_kを求めると、
\displaystyle\begin{align}
S_n&=\sum_{k=1}^{n}\frac{3}{2}\left(\frac{1}{3^k}-\frac{1}{9^k}\right)\\
&=\frac{3}{2}\left(\frac{1}{3}\frac{1-\frac{1}{3^n}}{1-\frac{1}{3}}-\frac{1}{9}\frac{1-\frac{1}{9^n}}{1-\frac{1}{9}}\right)
\end{align}

よって無限級数の和はS_nn\to\inftyであるから、
\displaystyle
\lim_{n\to\infty}S_n=\frac{3}{2}\left(\frac{1}{3}\frac{1}{1-\frac{1}{3}}-\frac{1}{9}\frac{1}{1-\frac{1}{9}}\right)=\frac{9}{16}

高校生はこれで解けば満点がもらえると思います。でも大学生らしい方法でも解きたいので以下のような方法も考えました。

最初にこの問題を見たとき、各括弧内の指数部分の取り方に作為的なものを感じました。ぼくはこれを次のような表から得られたものではないか??と考えました。

\displaystyle\frac{1}{3} \displaystyle\frac{1}{3^2} \displaystyle\frac{1}{3^3} \displaystyle\frac{1}{3^4} \displaystyle\frac{1}{3^5} \cdots
\displaystyle\frac{1}{3^3} \displaystyle\frac{1}{3^4} \displaystyle\frac{1}{3^5} \displaystyle\frac{1}{3^6} \displaystyle\frac{1}{3^7} \cdots
\displaystyle\frac{1}{3^5} \displaystyle\frac{1}{3^6} \displaystyle\frac{1}{3^7} \displaystyle\frac{1}{3^8} \displaystyle\frac{1}{3^9} \cdots
\displaystyle\frac{1}{3^7} \displaystyle\frac{1}{3^8} \displaystyle\frac{1}{3^9} \displaystyle\frac{1}{3^{10}} \displaystyle\frac{1}{3^{11}} \cdots
\displaystyle\frac{1}{3^9} \displaystyle\frac{1}{3^{10}} \displaystyle\frac{1}{3^{11}} \displaystyle\frac{1}{3^{12}} \displaystyle\frac{1}{3^{13}} \cdots
\cdots \cdots \cdots \cdots \cdots \cdots

この表を見れば上に導入したa_nは表のn行1列から1行n列に向かう直線上の和に対応することが分かります!!!!!このような和の取り方を二重級数の対角線式の番号の付け方と呼びます。このことは毎度おなじみの高木貞治の解析概論に載っています。
表の各要素の値は正であるからこの無限級数は収束するならば絶対収束する、すなわち和の順序によらないことが分かります。なので和の順序を交換するためにはこの無限級数が収束することをはじめに示さなければなりません。が、まあ入試問題に出ているなら収束やろ??と思ってしまってこの級数が絶対収束するものとして和の順番を変えてしまいましょう。*1
順番の変え方としてはいろいろあると思いますが、ここでは各行を足しあげてみましょう。するとこの無限級数

\displaystyle\begin{align}
&\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{3^3}+\cdots\right)+\left(\frac{1}{3^3}+\frac{1}{3^4}+\frac{1}{3^5}+\cdots\right)+\left(\frac{1}{3^5}+\frac{1}{3^6}+\frac{1}{3^7}+\cdots\right)+\cdots\\
=&\frac{1}{3}\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)+\frac{1}{3^3}\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)+\frac{1}{3^5}\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)+\cdots\\
=&\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3^3}+\frac{1}{3^5}+\cdots\right)\left(1+\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\cdots\right)\\
=&\frac{1}{3}\frac{1}{1-\frac{1}{3^2}}\frac{1}{1-\frac{1}{3}}\\
=&\frac{9}{16}
\end{align}

となり上と同じ値が得られました!!!各列を足しあわせても同じ値が得られることはすぐに分かります。

高校生の解く問題を大学数学の観点からちょっとテクニカルに解いてみました。こういうのも面白いですね。

それでは。

*1:とは言ってもきちんと示す必要があります。a_n{<}n/3^nより\lim_{n\to\infty}S_n<3/4がわかるので収束することが示されます。

古典電子半径

こんにちは、よねすけです。

理論電磁気学

理論電磁気学

この本を久しぶりに眺めていたら古典電子半径の話が載っていて初見だったのでまとめることにしました。
N体の電子による電磁場の密度エネルギーw({\bf x},t)
\displaystyle w({\bf x},t)=\frac{1}{2}\left({\bf E\cdot D}+{\bf B\cdot H}\right)
で表されます。また電磁場の全エネルギーはこの密度エネルギーの空間積分で表され、
\displaystyle W(t)=\int_V d^3xw({\bf x},t)
となります。
このとき、静止した電子が半径a電荷-eの古典的小帯電体球とみなしてみましょう。このとき電場は電子からの距離rを用いて、
\displaystyle E(r)=\frac{-1}{4\pi\varepsilon_0}\frac{e}{r^2}
と表されます。いま静電場系を考えるので電磁場のエネルギーの磁場による寄与は無視できます。このとき電磁場の全エネルギーは、
\displaystyle\begin{align}
W&=\frac{1}{2}\int_Vd^3x{\bf E\cdot D}\\
&=\frac{\varepsilon_0}{2}\int_Vd^3x({\bf E}({\bf x},t))^2\\
&=\frac{\varepsilon_0}{2}\int_{a}^{\infty}drE(r)^24\pi r^2\\
&=\frac{\varepsilon_0}{2}\left(\frac{e}{4\pi\varepsilon_0}\right)^2 4\pi\int_{a}^{\infty}\frac{dr}{r^2}\\
&=\frac{1}{2}\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac{1}{a}
\end{align}
となります。
相対論の結果を援用するならば静止質量mが持つエネルギーは
mc^2
になることが分かっています。これが電磁場の全エネルギーに一致するものと考えれば、
\displaystyle\begin{align}
&mc^2=\frac{1}{2}\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0}\frac{1}{a}\\
\Leftrightarrow &a=\frac{1}{2}\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0 mc^2}
\end{align}
このようにして電子の半径が分かります。このときの係数の1/2を無視したものを古典電子半径と呼び、
a_e\simeq 2.8\times 10^{-13}[cm]
です。

電子が点電荷であるものとすれば、a\to 0としなければなりません。そうすると電磁場の全エネルギーWは無限大に発散してしまいます。これは古典的な電子のモデルがうまくいっていなことを意味しています。また量子力学においても電子は点電荷であるとみなされる(らしい)のでこの無限大の自己エネルギーの困難は量子力学でも引き継がれることになるそうです。

量子論における電子の議論は僕はあまり詳しくないので理論電磁気学のことをほぼそのまま書くままになってしまいました。この分野についても勉強していきたいと思います。

それでは。

Mayerの式を2通りの証明で

こんにちは、よねすけです。

Mayerの式を2通りで示したいと思います。Mayerの式とは、理想気体の等圧モル比熱c_p、等積モル比熱c_vとの間に

c_p-c_v=R
の関係式が成り立つことを言います。ここでR気体定数です。

熱力学的関係式を用いる

これは至ってシンプルな計算により求まります。理想気体の等積過程を考えると外にする仕事はないので熱力学第一法則から

\Delta U=\Delta Q
となります。等積過程においてc_v=d'Q/dTとかけるのでこれより、
\displaystyle c_v=\left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V
が分かります。
同様にして等圧過程において熱力学第一法則から
\displaystyle\Delta Q=\Delta U+p\Delta V=\left(\frac{\partial U}{\partial T}\right)_V\Delta T+\left\{p+\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T\right\}\Delta V
となります。c_p=d'Q/dTc_v=(\partial U/\partial T)_Vを用いて、
\displaystyle c_p=c_v+\left\{p+\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_T\right\}\left(\frac{\partial V}{\partial T}\right)_p
が分かります。
今考えるのは理想気体なので理想気体の状態方程式からV=RT/pと書けます。また内部エネルギーは体積によらないと考えられるので(\partial U/\partial V)_T=0となります。これより、
\displaystyle c_p-c_v=p\left(\frac{\partial}{\partial T}\frac{RT}{p}\right)_p=R
となり示されました。

Mayerのサイクルを用いる

もうひとつの証明方法としてMayerのサイクルと呼ばれるものを考える方法があります。Mayerのサイクルは自由断熱膨張、等圧過程、等積過程の3つの過程を合わせたものになっていて、下のようなP-V図を描くことが出来ます。
f:id:otaku_of_suri:20170306202644p:plain
理想気体の状態方程式から状態1,2,3のそれぞれにおける温度は、p_1 V_1/R, p_2 V_2/R, p_2 V_1/Rとなります。
このサイクルの各過程間の内部エネルギーの変化を計算します。
状態1から状態2に移行する間の内部エネルギーの変化\Delta U_{1\to 2}

\displaystyle\Delta U_{1\to 2}=c_v\Delta T=\frac{c_v}{R}(p_2V_2-p_1V_1)
になります。
状態2から状態3に移行する間の内部エネルギーの変化\Delta U_{2\to 3}について、熱力学第一法則を用いると
\displaystyle\begin{align}
\Delta U_{2\to 3}&=\Delta Q-p\Delta V\\
&=c_p\Delta T-p_2(V_1-V_2)\\
&=\left(\frac{c_p}{R}-1\right)p_2(V_1-V_2)
\end{align}
です。
状態3から状態1に移行する間の内部エネルギーの変化\Delta U_{3\to 1}は、
\displaystyle\Delta U_{3\to 1}=c_v\Delta T=\frac{c_v}{R}(p_1V_1-p_2V_1)
です。
以上より各過程での内部エネルギーの変化が求まりました。この3つの変化を足し合わせれば状態1から状態1への内部エネルギーの変化が求まりますが、これは明らかに0です。故に、
\displaystyle\begin{align}
&\Delta U_{1\to2}+\Delta U_{2\to3}+\Delta U_{3\to1}=0\\
\Rightarrow &\frac{c_v}{R}(p_2V_2-p_1V_1)+\left(\frac{c_p}{R}-1\right)p_2(V_1-V_2)+\frac{c_v}{R}(p_1V_1-p_2V_1)=0\\
\Leftrightarrow&(c_p-c_v-R)(V_1-V_2)=0
\end{align}
です。V_1\ne V_2を考えることによってMayerの式
c_p-c_v=R
を導くことに成功しました!!

このブログではある一つの命題について色んな角度から証明することを心がけています。今回も綺麗な証明を紹介出来たかなと思っています。また別の証明を知っているよ!!っていう方はぜひご一報ください!!

今回の証明にも久保先生の本を参考にさせて頂きました。

大学演習 熱学・統計力学

大学演習 熱学・統計力学

それでは。

ポアソンの式の一般化

こんにちは、よねすけです。

今回はポアソンの式の一般化を試みたいと思います。
そもそもポアソンの式とは、理想気体の断熱過程において圧力Pと体積V

PV^{\gamma}=const.
の関係で結ばれる式のことです。ここで\gammaは等圧比熱c_pと等積比熱c_vを用いて、
\displaystyle\gamma=\frac{c_p}{c_v}
と表されます。
証明は熱力学第一法則を用います。すなわち内部エネルギーの変化\Delta Uと与えられる熱量\Delta Qと仕事-P\Delta Vの間には
\Delta U=\Delta Q-P\Delta V
なる関係式があります。いまは断熱過程を考えるので与える熱量は0です。また内部エネルギーは体積によらず温度のみによることが知られておりその変化\Delta Uは等積比熱と温度Tを用いて、
\Delta U=c_v\Delta T
と書けます。よって先ほどの式は
c_v\Delta T=-P\Delta V
と書けます。理想気体の状態方程式PV=RTを代入すると
\displaystyle\begin{align}
c_v\Delta T&=-\frac{RT}{V}\Delta V\\
\Leftrightarrow\frac{c_v}{R}\frac{\Delta T}{T}&=-\frac{\Delta V}{V}
\end{align}
となります。\Deltadに変えて両辺を積分すると、
\displaystyle\begin{align}
\frac{c_v}{R}\log T+\log V&=const.\\
\Leftrightarrow\log\left(TV^{\frac{R}{c_v}}\right)=const.\\
\Leftrightarrow TV^{\frac{R}{c_v}}=const.
\end{align}
です。ここでMayerの式
c_p-c_v=R
と上で導入した\gammaを代入すると、
TV^{\gamma-1}=const.
がわかります。ここに理想気体の状態方程式を用いて温度Tを消去することで、
PV^{\gamma}=const.
が示されました。

次にこれを一般の過程におけるものとしてこの保存量を求めてみましょう。一般の過程における比熱をc_xとします。考える温度の範囲内で比熱が一定であるとすると、

\Delta Q=c_x\Delta T
となります。これを上と同じように熱力学第一法則の式に当てはめると、
\displaystyle\begin{align}
c_v\Delta T&=c_x\Delta T-P\Delta V\\
\Leftrightarrow(c_v-c_x)\Delta T&=-P\Delta V
\end{align}
となります。ポアソンの式の場合と同じように計算してやると、
\displaystyle TV^{\frac{R}{c_v-c_x}}=const.
となります。ここにMayerの式と理想気体の状態方程式を代入してやると、
\displaystyle PV^{\frac{c_x-c_p}{c_x-c_v}}=const.
となります。これが一般化されたポアソンの式です。体積Vの肩にのっている数をfと書けば、
\displaystyle PV^f=const.,\ \ f=\frac{c_x-c_p}{c_x-c_v}
となります。
この一般化されたポアソンの式を用いるといろいろな過程に関する比熱を求めることが出来ます。例えば断熱過程においてはf=\gammaなのでc_x=0です。等温過程においては理想気体の状態方程式からPV=const.なのでc_x=\inftyと考えることが出来ます。また等積、等圧変化の場合にc_xがそれぞれc_v,c_pに一致することも確かめられます。

今回の記事を書くにあたっては下の本を参考にしました。

大学演習 熱学・統計力学

大学演習 熱学・統計力学

それでは。

not a cloud in the sky

こんにちは、よねすけです。

この前の木曜日かな、めっちゃ天気良くて授業始まる前に思わずパシャりと撮ってしまった写真。あまり天気の良さが伝わらんね笑
あと、後期の成績発表があって人生初のフル単でした!!!!めでたい!!!

そんなわけでバーゼル問題の証明を書きたいと思います。バーゼル問題に関してはこのブログでは扱うのが3回目ですね。いろんな証明があるのはやっぱり面白いですね。以前の記事については以下に貼っておきます。
otaku-of-suri.hatenablog.com
otaku-of-suri.hatenablog.com

今回バーゼル問題を扱う際に大事になるのは次の積分です。

\displaystyle I=\int_{0}^{1}\frac{\arcsin x}{\sqrt{1-x^2}}dx
まずはこの積分を変数変換を用いて値を求めましょう。x=\sin\thetaと置くと、
\displaystyle I=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\frac{\theta}{\cos\theta}\cos\theta d\theta=\left[\frac{\theta^2}{2}\right]_{0}^{\frac{\pi}{2}}=\frac{\pi^2}{8}

これで積分値がわかりました。次にこの積分級数展開しましょう。
\displaystyle\arcsin x=\int_{0}^{x}\frac{dt}{\sqrt{1-t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}x^{2n+1}
を用いると
\displaystyle\begin{align}
I&=\int_{0}^{1}\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}x^{2n+1}\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}dx\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}\int_{0}^{1}\frac{x^{2n+1}}{\sqrt{1-x^2}}dx\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n+1}\theta d\theta
\end{align}
となります。最後の行はx=\sin\thetaの変数変換を行いました。ここで\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n+1}\theta d\thetaの積展開
\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}\sin^{2n+1}\theta d\theta=\frac{2\cdot\cdots 2n}{1\cdot3\cdot\cdots\cdot(2n+1)}
を用いると、
\displaystyle\begin{align}
I&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}\frac{2\cdot\cdots 2n}{1\cdot3\cdot\cdots\cdot(2n+1)}\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(2n)!}{4^n(n!)^2(2n+1)}\frac{2^n\cdot 2^n\cdot(n!)^2}{(2n)!}\frac{1}{2n+1}\\
&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2n+1)^2}
\end{align}
となります。以上より
\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2n+1)^2}=\frac{\pi^2}{8}
がわかりました。今、求めたいバーゼル問題を
\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\alpha
とおけば、これを偶数と奇数に分けることによって
\displaystyle\begin{align}
\alpha&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2n+1)^2}+\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{4n^2}\\
&=\frac{\pi^2}{8}+\frac{\alpha}{4}
\end{align}
より、この方程式を解くことで、\alpha=\pi^2/6がわかります。以上よりバーゼル問題
\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}
が示されました。

めっちゃテクニカルやけどかっこいい証明やと勝手に思ってます。

それでは。

おもろい図形

こんにちは, よねすけです.
f:id:otaku_of_suri:20170212150745p:plain
円の中に一点を適当にとり, それを通る線分とそれに垂直な線分を上の図のようにとったとしましょう. このとき, 円の半径rを用いて

a^2+b^2+c^2+d^2=4r^2
となります. 図形に関する等式で個人的に一番好きなので今回紹介することにしました.

この式の証明をするために下のように補助線を引きます.
f:id:otaku_of_suri:20170212151411p:plain
線分QXは円の中心を通るように取るものとします. そうすると

RS=PX
が分かります. これは線分QXが中心を通る事から, 四角形PRSXが等脚台形であることが分かるからです. 線分PQ, RS三平方の定理から,
PQ=\sqrt{a^2+b^2}, RS=\sqrt{c^2+d^2}
です. 三角形PQXは直角三角形なのでまた三平方の定理を用いる事が出来て,

\begin{eqnarray}
QX^2&=&PQ^2+PX^2=PQ^2+RS^2\\
\Leftrightarrow (2r)^2&=&(\sqrt{a^2+b^2})^2+(\sqrt{c^2+d^2})^2\\
\Leftrightarrow 4r^2&=&a^2+b^2+c^2+d^2
\end{eqnarray}
が示されました.
とても綺麗な式ですね.

それでは.

[追記]
いろいろ突っ込まれそうなので一応書いておくとこの証明ははじめに取る点が円の中心と一致しないときに限り成立します. 円の中心に一致する時は, a=b=c=d=rなので明らかに成り立ちますね. また円の中心でない点を取った場合には適当な回転を行えば上の図のようにacよりも長く, bdよりも短くなるようにすることができるので確かに問題ありません. 図形を用いて証明する場合はこういった面倒があるので大変ですね.

判別式パート3

こんにちは, よねすけです.

otaku-of-suri.hatenablog.com
以前3次方程式の判別式についてまとめました. 今回n次方程式の特別な場合としてのx^n+px+q=0の判別式を求めることが出来たので以下に記しておきます.
判別式と微分の関係については高木貞治の本を参考にしました.

代数学講義 改訂新版

代数学講義 改訂新版


判別式Dは係数p,q多項式で次のように表されます.

\displaystyle D=\sum_{\alpha,\beta}\lambda_{\alpha,\beta}p^{\alpha}q^{\beta}
n次方程式の判別式の重みは定義から
{}_nC_2\times 2=n(n-1)
です. pの重みはn-1であり, qの重みはnなので, 重みについて以下の式
\alpha (n-1)+\beta n=n(n-1)
が成立します. 連続する2整数は互いに素であることを考えれば, \alpha,\betaの値は,
(\alpha, \beta)=(n,0), (0,n-1)
が分かります. これを用いて判別式を改めて書き直すと,
D=\lambda p^n+\mu q^{n-1}
になります. 以下で\lambda,\muをそれぞれ求めて行きましょう.

  • p=0, q=-1のとき

考える方程式は

x^n-1=0
になるのでこの方程式の解はすぐ求まって,
\displaystyle x=\exp\left(2\pi i\frac{k}{n}\right)\ (0\le k{<}n)
です. これと判別式と微分の関係式を用いると,
\displaystyle
\begin{eqnarray}
D&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}\prod_{k=0}^{n-1}f'\left(e^{2\pi i\frac{k}{n}}\right)\\
&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^n\exp\left(2\pi i\frac{n-1}{n}\sum_{k=0}^{n-1}k\right)\\
&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^n\exp(\pi i(n-1)^2)\\
&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^n (-1)^{n-1}
\end{eqnarray}
が分かりました. よって,
\displaystyle
\begin{eqnarray}
\mu(-1)^{n-1}&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^n (-1)^{n-1}\\
\Leftrightarrow\mu&=&(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^n
\end{eqnarray}
となります.

  • p=-1, q=0のとき

考える方程式は

x^n-x=x\left(x^{n-1}-1\right)
なのでこの方程式の解は
\displaystyle x=0,\exp\left(2\pi i\frac{k}{n-1}\right)\ (0\le k{<}n-1)
です. x=0を除いた解のみから構成される判別式は一個上で求めた判別式のn-1次の場合にあたるのでそれを用いると
\displaystyle
\begin{eqnarray}
D&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}(-1)^{n-2}\times\prod_{k=0}^{n-2}\exp\left(2\pi i\frac{k}{n-1}\times 2\right)\\
&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}(-1)^n\times\exp\left(4\pi i\frac{k}{n-1}\sum_{k=0}^{n-2}k\right)\\
&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}(-1)^n\times\exp(2\pi i(n-2))\\
&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}(-1)^n
\end{eqnarray}
がわかります. よって
\displaystyle
\begin{eqnarray}
\lambda(-1)^n&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}(-1)^n\\
\Leftrightarrow\lambda&=&(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}
\end{eqnarray}
となります.

以上からn次方程式x^n+px+q=0の判別式は

\displaystyle D=(-1)^{\frac{(n-1)(n-2)}{2}}(n-1)^{n-1}p^n+(-1)^{\frac{n(n-1)}{2}}n^nq^{n-1}
これは確かに以前求めた3次方程式の判別式にも一致することはすぐに確かめられます.以下のリンクの通りです.
otaku-of-suri.hatenablog.com

それでは.