オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

フーリエ級数の一様収束性

こんにちは、よねすけです。

院試勉強してると色々気づきがあって面白いです。大半は面白くないですが。

周期的な可積分関数のフーリエ級数がどのようなときに元の関数に収束するかについては色々な議論がなされています。例えば周期的連続関数でフーリエ級数が絶対収束する関数についてはフーリエ級数はもとの関数に一様収束することが知られています。一方で連続関数でもそのフーリエ級数が発散する場合もあり、非常に複雑な世界となっています。これだけでは連続関数はフーリエ級数を扱う上ではあまり良い性質を持っていないように思えますが、ここで収束の意味を拡張することによって連続関数を常に一様収束させることができるようになるのです!!!前置きが長くなりましたが今回はこの話について書こうと思います。

はじめにフーリエ級数の部分和を定義します。周期的な可積分関数f(t)についてその複素フーリエ係数を\hat{f}_nと書きます。すなわち、

\displaystyle\begin{eqnarray}
\hat{f}_{n}=\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(t)e^{-int}dt
\end{eqnarray}
この時、フーリエ部分和S_N(t)を次で定義します。
\displaystyle\begin{eqnarray}
S_N(t)=\sum_{n=-N}^{N}\hat{f}_{n}e^{int}
\end{eqnarray}
大事なことはこの部分和が畳み込み積分の形でかけることです。畳み込み積分とは可積分な周期関数f,gについて畳み込み積分f*g
\displaystyle\left(f*g\right)(t)\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(s)g(t-s)ds
です。これを用いて式変形を行うと、
\displaystyle\begin{eqnarray}
S_N(t)=&\sum_{n=-N}^{N}\hat{f}_{n}e^{int}\\
=&\sum_{n=-N}^{N}\left(\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(s)e^{-ins}ds\right)e^{int}\\
=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(s)\left(\sum_{n=-N}^{N}e^{in(t-s)}\right)ds\\
=&\left(f*D_N\right)(t)
\end{eqnarray}
これによりフーリエ部分和を畳み込み積分で表すことが出来ました。ここで登場したD_Nディリクレ核と呼びます。このとき、一般にN\to\inftyについてS_Nfには一様収束しません。しかしチェザロ総和の意味では一様収束します。すなわち
\displaystyle \sigma_N(t):=\frac{1}{N}\sum_{n=0}^{N-1}S_n(t)=\frac{1}{N}\left(f*D_0(t)+\cdots+f*D_{N-1}(t)\right)=f*\left(\frac{1}{N}\sum_{n=0}^{N-1}D_n\right)(t)
と書いた時に、\sigma_Nfに一様収束するということです。ここで
\displaystyle F_N(t):=\frac{1}{N}\sum_{n=0}^{N-1}D_n(t)
フェイエール核と呼び、これはディリクレ核のチェザロ和になっています。一所懸命計算すると、
\displaystyle F_N(t)=\frac{1}{N}\left(\frac{\sin(Nt/2)}{\sin(t/2)}\right)^2

実はこのフェイエール核は良い核(good kernel)となっています。周期的な関数の列\{K_n\}_{n=1}^{\infty}が良い核というのは、

  • \displaystyle {}^{\forall}n\in\mathbb{N},\ \frac{1}{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}K_n(t)dt=1
  • \displaystyle {}^{\exists}M>0,\ 、s.t.,{}^{\forall}n\in\mathbb{N},\ \int_{-\pi}^{\pi}|K_n(t)|dt{<}M
  • \displaystyle {}^{\forall}\delta >0,\lim_{n\to\infty}\int_{\delta\leq|t|\leq\pi}|K_n(t)|dt=0

を満たすものようなことを言います。フェイエール核が良い核であることは実際に確かめられます。良い核については次の定理が知られています。この意味において「良い」という名前がついています。

{K_n}を良い核の列とし、fを周期的可積分関数とします。ft_0で連続ならば、
\displaystyle\lim_{n\to\infty}(f*K_n)(t_0)=f(t_0)
である。特にfが連続ならこれは一様収束である。
この定理より、連続関数fについては\sigma_N=f*F_N\rightrightarrows fがわかるのです。よって連続関数はチェザロ総和の意味では常に一様収束するのです。

それでは。