オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

無理数の無理数の無理数の・・・

こんにちは。世の大学生は試験前で忙しい頃ですね。僕ももれなく忙しいです。試験勉強頑張りましょうね。

少し前にtsujimotterさんのこの記事が話題になりました。
tsujimotter.hatenablog.com
この記事では\displaystyle\sqrt{2}^{\sqrt{2}}を用いて無理数無理数乗の中で有理数になるものが存在することの証明を行っていました。結果から言うと\displaystyle\sqrt{2}^{\sqrt{2}}超越数になります。(このことは
ゲルフォント=シュナイダーの定理 - Wikipediaを用いるとすぐに分かります。)
では、次の値を考えてみましょう。

\LARGE{\displaystyle\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdots}}}}}}}}}}}}}}

なんじゃこれ、そもそも収束するのか??って思わせる式ですね。
でもこれ、きちんと収束してくれるんですよ。しかも有理数に。不思議ですよね。\displaystyle\sqrt{2}^{\sqrt{2}}超越数になるのに、その操作を無限回行うと有理数になる。無限というものの神秘を感じます。
以下に証明を示します。証明は理系の高校生ならわかるとてもシンプルなものになっています。
\displaystyle\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdots}}}}}}}}}}}}}=2

(証明)
与えられた式を次のように数列を用いて漸化式で書き換えます。
\displaystyle a_n=\sqrt{2}^{a_{n-1}},a_0=\sqrt{2},s.t.\lim_{n\to\infty}a_n=2

証明すべきことはa_n2に収束することです。
まずa_n<2数学的帰納法により示します。n=0の時は明らかです。あるna_n<2だとすると
a_{n+1}=\sqrt{2}^{a_n}<\sqrt{2}^2=2

となりn+1の場合も示されました。以上よりa_n<2です。
次にf(x)=\sqrt{2}^xという関数を考えます。
\displaystyle f'(x)=(\log{\sqrt{2}})\sqrt{2}^x

となります。ここで平均値の定理を考えると区間(a_n,2)
\displaystyle\frac{f(2)-f(a_n)}{2-a_n}=f'(c_n)

なるc_nが存在します。c_n<2が分かっているのでf'(c_n) <\log 2です。これより
\begin{eqnarray*}
&&f(2)-f(a_n)=f'(c_n)(2-a_n)\\
&\Rightarrow&2-a_{n+1}<(\log 2)(2-a_n)
\end{eqnarray*}

が分かります。あとはこれを順番に用いると
\begin{eqnarray*}
0<2-a_{n}&<&(\log 2)(2-a_{n-1})\\
&<&(\log 2)^2(2-a_{n-1})\\
&&\cdots\\
&<&(\log 2)^n(2-a_0)
\end{eqnarray*}

となります。\log 2<1よりn\to\inftyの極限で
2-a_n\to 0\Leftrightarrow a_n\to 2

となりました。以上より\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=2が示されました。
高校生でも理解できる簡単な証明ですね。(これは多分同志社大学の数学の入試問題やった。)
一般にa自然対数の底eよりも小さな1以上の実数なら
\begin{eqnarray*}
\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\sqrt[a]{a}^{\cdots}}}}}}}}}}}=a
\end{eqnarray*}

が成立します。極限は奥が深いですね。
それでは。