オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

有界列が収束すること

とある仕事で採点してるときに"収束列が有界であること"の証明の出来が壊滅的に悪く、非常に厳しい気持ちになりました。ここにその証明を書くことでその厳しい気持ちを昇華させておきます。

収束列が上に有界であること

ここでは実数列について考えます。また、上に有界であることのみ証明します。下に有界であることも同様の証明ができます。
点列\left\{a_n\right\}_{n\in\mathbb{N}}がある値aに収束するとき、\varepsilon\delta論法を用いて言い換えると、

\forall\varepsilon>0,\ \exists n_{0}\in\mathbb{N},\ \text{s.t.,}\ \forall n>n_{0},\ \left|a_{n}-a\right|<\varepsilon
と書けます。これを変形すると、n>n_{0}a_n < a+\varepsilonであることが分かります。また、n\leq n_{0}においては、
a_{n}\leq\max\left\{a_{1},a_{2},\cdots,a_{n_{0}}\right\}
となります。この右辺について、\alpha=\max\left\{a_{1},a_{2},\cdots,a_{n_{0}}\right\}とでもおいてみると、n>n_{0}での考察と合わせると、
a_{n}\leq\max\{a+\varepsilon,\alpha\}
となることが分かります。以上から、収束列が上に有界であることが示されました。

おまけ

上の証明では実数列に限定したのには一応理由があります。一般に"上に有界"という概念は順序が定まる順序集合においてのみ定義されるものです。例えば、複素平面\mathbb{C}には順序が定まらないことが知られています。なので、複素数列が収束するときに、"上に有界である"、と言うことはできません。距離空間でより一般に有界という言葉が定義されているのでそれを用いると、距離空間での収束列は有界であることが示されます。

それでは。