そもそも虚軸ってなんなの
こんにちは.かじはらです.
今日はこんな問題を考えてみます.
この式を「一次元の世界の計算」と呼んでおきましょう.
これは考える範囲を複素数としなければ解をもたず.
となります.簡単ですね.
さて,複素数はどんなものかといわれたら多くの人が次の式を思い起こすと思います.
複素数を座標で表すときに,ちょうどこのxを直交座標のx軸に対応させて実軸と呼び,yをy軸に対応させて虚軸と呼びました.
式で見ると当然のように思えますがそもそもなぜ虚軸をy軸と対応させたのでしょうか.
そこでいったんさっきの問題をわきに置いて次の問題を考えたいと思います.
実際に計算すればわかることですがこの問題の解は実は無数にあります.ここでは最も簡潔だと思われる
を採用しましょう. この行列をと置き,最初の問題を書き直すと
となります.これを「二次元の世界の計算」と呼びましょう.最初に考えた「一次元の世界の計算」と形がとても似ていますね.
「一次元の世界」で掛け算を考えたとき,その単位元は「1」です。その世界で「ある一次の行列を2乗すると-1になる数」を考えようとすると実数の範囲では答えが見つからず,複素数という概念を導入しなければならなくなりました.
「二次元の世界」で掛け算を考えたとき,その単位元は「」です.「ある二次の行列を2乗するとになる数」を考えるとちゃんと実数の範囲で答えが見つかります.
ここまでくると一次元だった(実数の)直線を複素数に拡張しよう,つまり虚数単位を導入しようとするとき,二次元である平面を考える発想はとても自然なことに思えてきませんか?
ではなぜ虚軸は「x軸と直交をなすy軸」なのでしょうか.単に平面を考えるだけなら別に直交していなくてもいいはずですよね.(まあ直交してるものを考えるのが一番わかりやすいじゃん,と言われてしまうとその通りなのですが.)
行列をこんな風に書き換えてみましょう.
回転行列がでてきました.つまり「二次元の世界」での解となる行列(のひとつ)は直交座標を90度回転させるようなものだということになります.
つまり実軸を(正の符号を採用すれば反時計回り,負の符号なら時計回りに)90度回転させたものが虚軸に対応する,ということが,こう書くととても腑に落ちますね.わーい.
なんだかまわりくどく書いてしまいました.
そもそもどうしてこんなことを書いたかと言うと,高校数学の新課程に関して,素人ながら少し思うことがあったからです.
高校数学の新課程では行列がなくなり,複素平面が復活しました.
でも,今までの議論を思い出すと,この新課程には違和感を覚えます.
今日本屋で高校数学の参考書の複素平面のページを見たら,最初に
こういう式がいきなり書いてあるものが多くて,それ以降は共役がどうの,絶対値がどうの,といったことが書いてあって.
高校の頃,どうやって複素平面について学んだのかはよく覚えてませんが,もし今の自分が誰かに複素平面について説明しろ,と言われたら最初の行列の概念を使うと思うんです.だから行列を消して,複素数を復活させる,ということが,自分にとってはむずがゆい.
…偉そうに高校数学に文句を言ってしまいました.すみません.
最後まで読んでくれた方,ありがとうございます.
おしまい.