オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

Liouvilleの定理(複素解析)とその応用

こんばんは。よねすけです。

今2回生ということで実験に追われているわけですが、この前返却されたレポートを見てみると20点満点で9点しかありませんでした笑
笑えないですね。もう少しまじめに実験に取り組むべきだった。。。

さて、今回はLiouvilleの定理を紹介します。(読み方は多分リウビリ)解析力学、数論の分野にもLiouvilleの定理というものがありますが、それとは別物なのでご注意を。(しかし、この3つはいずれも同じリウビリさんが発見したそうです。すごすぎ!!)

Liouvilleの定理は以下の主張のことを言います。

Liouvilleの定理
\mathbb{C}有界な正則関数は定数関数のみである。

なんという簡潔さ!!絶対授業で扱うべきだと思うんですけどねえ。。。

早速証明を見てみましょう。

f(z)\mathbb{C}有界な正則関数とする。f(z)が定数関数であることを示せれば良い。
ここで、\mathbb{C}有界であるといことは
\exists M\in\mathbb{R}\ s.t.,\forall z\in\mathbb{C} ,\ |f(z)|\leq M
である。
いま、f(z)\mathbb{C}上の正則関数であるからz=0テイラー展開が出来て、以下のように書ける。
\displaystyle f(z)=\sum_{n=0}^{\infty}a_{n}z^{n}
ただし、\displaystyle a_n=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}である。
ここで、コーシーの積分公式を思い出すと、
\displaystyle f^{(n)}(0)=\frac{n!}{2\pi i}\oint_{C_r}\frac{f(\zeta)}{\zeta^{n+1}}d\zeta
ただし、C_{r}は原点を中心とする半径r>0の円である。これを用いると、
\displaystyle a_n=\frac{1}{2\pi i}\oint_{C_r}\frac{f(\zeta)}{\zeta^{n+1}}d\zeta
以降、これについて調べてみる。
\displaystyle |a_n|\leq\frac{1}{2\pi}\oint_{C_r}\frac{|f(\zeta)|}{|\zeta|^{n+1}}|d\zeta|
であり、はじめに有界であることから書けた条件を用いれば、
\displaystyle |a_n|\leq\frac{M}{2\pi}\int_{0}^{2\pi}\frac{1}{r^{n+1}}rd\theta
右辺を計算すると
\displaystyle \frac{M}{2\pi}\cdot\frac{2\pi}{r^n}=\frac{M}{r^n}
である。いまrは任意であるから、n\geq 1のときr\to\infty|a_n|\to 0がわかる。
よって、n\geq 1 a_n=0なのでf(z)=a_0となり、f(z)が定数関数であることが示された。

どうですかこの簡潔さ!!(2回目)

実関数を考えてみましょう。\mathbb{R}上で有界かつ微分可能な関数f(x)は常に定数関数だけでしょうか。まあそんなはずはなくて、一番有名な例が \sin xじゃないでしょうか。ここに実関数と複素関数の明確な違いが見て取れると思います。

しかもLiouvilleの定理は意外なところで活躍します。それは代数学の基本定理と呼ばれるものです。

代数学の基本定理
p(t)\mathbb{C}上のdegp\geq 1である多項式とする。このときp(z)=0であるz\in\mathbb{C}が少なくとも1つ存在する。

この定理の証明もLiouvilleの定理を用いればあっさり解けてしまうのです!!

\displaystyle f(z)=\sum_{i=0}^{n}a_{i}z^{i}\ (a_{i}\in\mathbb{C},a_n\neq 0,n\geq 1)
を考える。この複素関数\forall z\in\mathbb{C}f(z)=0とならないと仮定する。また、f(z)の表記自体がテイラー展開の形になっていることからもf(z)が正則であることがわかる。
そうすると、\displaystyle g(z)=\frac{1}{f(z)}\mathbb{C}上で正則かつ有界なので(\displaystyle g(z)=\frac{1}{0}となるようなことがない!!)、先ほど示したLiouvilleの定理が使えて、g(z)は定数関数であることがわかる。そうすると、自ずとf(z)も定数関数となるがこれは明らかにはじめに記したf(z)の表式に矛盾する。
よって、f(z)\mathbb{C}上で少なくとも1つの点z\in\mathbb{C}f(z)=0となるようなものが存在する。

どうですかこの簡潔さ!!(3回目)ぶひぃ~~~~~~~~~

代数学の基本定理の証明には様々なものがあって(回転数を用いるもの!!!)、ここでは語り尽くせないかもですけどこの証明はものすごくエレガントだなぁと思いました。
そんなこんなで今回は以上です。メリー・クリスマス!!

こんなこと書いてないで実験レポートの再提出()