オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

ウィルソンの定理の証明

こんにちは、よねすけです。久々の投稿になります。
今回はウィルソンの定理を二通りで証明したいと思います。

ウィルソンの定理とは、有理素数pを考えたとき、
\begin{equation}
(p-1)!\equiv -1(mod\ p)
\end{equation}
証明方法としては、逆元を用いるものと原始根を用いるものがあります。

  • 逆元を用いた証明

逆元に関する話は前回にも少し書きましたが、ここに改めて記すことにします。
1\leq a\leq p-1なる自然数aに対して、ka\equiv 1(mod\ p)なるk(1\leq k\leq p-1)がただひとつ存在し、\displaystyle k\equiv \frac{1}{a}と書きます。このとき

2,3,4,\cdots,p-3,p-2

p-3個の数字を\displaystyle\left(a_i,\frac{1}{a_i}\right)というペアに分けます。なぜこのようなペアに分けることができるかというと、
\displaystyle a\equiv\frac{1}{a}\Leftrightarrow a^2-1\equiv 0\Leftrightarrow a\equiv\pm1\equiv 1,p-1

となり、この2つははじめから除いてあるからです。よって、
\displaystyle 2\times 3\times 4\times\cdots\times p-2\equiv\prod_{i=1}^{\frac{p-3}{2}}a_i\cdot\frac{1}{a_i}\equiv 1

ゆえに、
(p-1)!\equiv 1\times 1\times (p-1)\equiv -1(mod\ p)

となり、ウィルソンの定理が示されました。

  • 原始根を用いた証明

(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}巡回群になることが知られており、その生成元を原始根と呼びます。(本当の定義は違う気がします。)
生成元の一つを選び、g\in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}とすると、
(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}=\{\overline{1},\overline{2},\cdots,\overline{p-1}\}=\{\overline{g^0},\overline{g^1},\cdots,\overline{g^{p-2}}\}
と書けることが分かります。p=2でウィルソンの定理が成り立つのは明らかなので以下ではp>2とします。

\displaystyle (p-1)!\equiv\prod_{i=1}^{p-2}g^i\equiv g^{1+2+\cdots+p-2}\equiv g^{\frac{(p-1)(p-2)}{2}}(mod\ p)

ここで\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv -1(mod\ p)です。なぜなら、
\displaystyle (g^{\frac{p-1}{2}})^2\equiv g^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

フェルマーの小定理から分かります。これより\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv \pm 1(mod\ p)となるのですが、いまgは原始根なので\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv -1(mod p)でなければならないのです。よって
\displaystyle (p-1)!\equiv (g^{\frac{p-1}{2}})^{p-2}\equiv (-1)^{p-2}\equiv -1(mod\ p)

が示されました。(最後にpが奇素数であることを用いました。)

以上です。どちらもとてもおもしろい証明だと思います。
それでは