オタクof数理の共同ブログ

京大情報学科数理工学コースの学生4人による共同ブログです

チェザロ平均

こんにちは,よねすけです.

今回は数列のチェザロ平均というものついて書きたいと思います.
今までは数列(今回は複素数列を考える.)の級数が収束するというのは複素数列の級数

\displaystyle c_0+c_1+\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}c_k

について第n部分和s_n

\displaystyle s_n=\sum_{k=0}^{n}c_k

と定めたときに,\lim_{n\to\infty}s_n=sとなるならば,級数和はsに収束する,というふうに習ったと思います.この定義でいくと例えば

\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}\left(\frac{1}{2}\right)^k=1

などが分かりますね.しかし,この定義だと次のような級数に対して極限を持ちません.

\displaystyle 1-1+1-1+1-\cdots=\sum_{k=0}^{\infty}(-1)^k

この場合は部分和の列が1,0,1,0,\cdotsとなるからです.しかし部分和が交互に1,0と現れるので希望としては1/2に収束してくれるといいなあ,って思いますよね??そこで次のような意味付けを与えてみましょう.

はじめのN個の部分和の平均をとって

\displaystyle\sigma_N=\frac{s_0+s_1+\cdots+s_{N-1}}{N}

とおいてみましょう.\sigma_Nを数列\{s_n\}の第Nチェザロ平均と呼ばれます.N\to\inftyのときに\{\sigma_N\}が普通の意味である複素数\sigmaに収束するときに,級数\sum_{k=0}^{\infty}c_k\sigmaチェザロ総和可能というふうに言います.

この定義で行くと先ほどの級数もきちんと1/2に収束することも確かめられますね.

しかし,少し問題があります.収束の意味をこのように押し広げたときにこれは果たして普通の意味で収束するときの値と一致するのでしょうか?なので次の事を確かめる必要があります.

普通の意味で収束する数列はチェザロ総和可能か??

これは真です.実際に確かめましょう.はじめと同じように数列\{c_n\}級数が普通の意味でsに収束するとしましょう.

\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=0}^{n}c_k=\lim_{n\to\infty}s_n=s

このとき次が成り立つことは一回生の微積分でやりました(\varepsilon -\delta論法で示せます.).

\displaystyle\lim_{n\to\infty}s_n=s\Rightarrow\lim_{n\to\infty}\frac{s_0+s_1+\cdots+s_{n-1}}{n}=s

これよりこの級数sにチェザロ総和可能であることが分かりました.しかも収束値まで一致します.

それでは.

三角関数に関する不等式

こんにちは,よねすけです.

今回は三角関数に関する不等式を示したいとおもいます.三角形ABCの角A,角B,角Cについて

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

となります.これを面白い方法で示してみましましょう(受験数学では有名な手法なので読者の皆さんは知っていることかも知れませんが,,,).

f:id:otaku_of_suri:20161127201346p:plain

上のような図を書いてみました.y=\sin xの上に角A,角B,角Cを載せてみましょう.そうするとその3点から三角形が作られますが,[0,\pi]においてy=\sin xは凸関数なので三角形は正弦波はその下に潜り込む形になります.その三角形の重心Gを考えると三角形の重心は必ずその内部にあるのでy座標の大小を比較すれば以下の式が成立します.

\displaystyle \frac{\sin A+\sin B+\sin C}{3}\le \sin\left(\frac{A+B+C}{3}\right)

A,B,Cは三角形の角なのでA+B+C=\piなのでそれを代入すれば

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

が得られました.しかしこれは三角形の角がすべて異なるときにしか成り立ちません.二等辺三角形や正三角形の場合は別に考えないと行けません.正三角形の場合は等号が成立するので大丈夫です.二等辺三角形の場合は三角形が線分になりますが線分を2:1に分ける点と3点の平均となる点が一致するので同様に上の式が成り立つことが分かります.以上より

\displaystyle \sin A+\sin B+\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{2}

が示されました.またこの式から

\displaystyle\sin A\sin B\sin C\le \frac{3\sqrt{3}}{8}

も分かります.これは相加平均相乗平均に関する不等式を用いると

\displaystyle \frac{3\sqrt{3}}{2}\ge \sin A+\sin B+\sin C\ge 3\sqrt[3]{\sin A\sin B\sin C}

なので左辺と右辺を3で割り,3乗すると示されます.三角関数に関する不等式は色々な証明方法が知られているので面白いですね.

それでは.

楕円の極座標表示

こんにちは,よねすけです.
今回は楕円の極座標表示の方法について書いてみたいと思います.

f:id:otaku_of_suri:20161127171145p:plain

x^2/a^2+y^2/b^2=1(a\ge b>0)で表される楕円を書いてみました.このとき焦点はe=\sqrt{1-(b/a)^2}を用いて,F(ea,0),F'(-ea,0)と書けます。
このような楕円があったときに,極座標においての原点を点Fとして図のように考える点と原点との距離をr,始線(この場合x軸のx\ge ea)からの偏角\thetaとします.
(x,y)Aと名付け,三角形AFF'について考えます.余弦定理を用いると

(r')^2=r^2+(2ea)^2-2\times r\times 2ea\times\cos(\pi-\theta)

が分かります.また楕円の作図の仕方から

r+r'=2a

も分かります.この2式を連立させて解くと,

\displaystyle r=\frac{b^2}{a(1+e\cos\theta)}

が分かります.点Aの座標を極座標変換してそれを楕円の方程式に代入して,,,とやっていくよりは少しは計算量が減る気がします.

それでは.

面白い積分

こんにちは,よねすけです.
今回は最近目にした面白い積分について書きます.

\displaystyle I=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{{\rm d}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}

タンジェントの肩に\sqrt{2}が乗っているので一瞬びっくりしてしまうのですが,これは実は見掛け倒しのもので別にe,\piでも何でも良いことが分かります.あ,あとこの積分は広義積分になりますが,きちんと収束するので安心して下さい.

実際に解きましょう.このIを求める前に,一旦x\mapsto y=\pi/2-xと変数変換されたI'を求めてみましょう.

\displaystyle
\begin{eqnarray}
I'&=&\int_{\frac{\pi}{2}}^0\frac{-{\rm d}y}{1+\frac{1}{\tan^{\sqrt{2}}y}}\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}y}{1+\tan^{\sqrt{2}}y}{\rm d}y\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x
\end{eqnarray}

I'Iに変数変換を施したものなので積分の値は変わりません.これを用いると

\displaystyle
\begin{eqnarray}
2I&=&I+I'\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{{\rm d}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}+\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{1+\tan^{\sqrt{2}}x}{\rm d}x\\
&=&\int_0^{\frac{\pi}{2}}{\rm d}x\\
&=&\frac{\pi}{2}
\end{eqnarray}

が分かりました.以上より,

\displaystyle I=\frac{\pi}{4}

となります.こんな感じの変数変換を施して積分結果が得られるものとしてこれもありますね.

\displaystyle \int_0^{\frac{\pi}{2}}\sin^2 x{\rm d}x=\int_0^{\frac{\pi}{2}}\cos^2 x{\rm d}x=\frac{\pi}{4}

それでは

フェルマーの小定理の証明

こんにちは、よねすけです。
今回はフェルマーの小定理を二通りで証明したいと思います。

フェルマーの小定理とは、素数p\gcd(a,p)=1なる整数aを考えたとき、
\begin{equation}
a^{p-1}\equiv 1(mod\ p)
\end{equation}
証明には数学的帰納法を用いるものと群の性質を用いるものがあります。

まずは

n^p\equiv n(mod\ n)

となることをnに関する数学的帰納法で示しましょう。n=1の時は明らかなので、あるnでこの式が成立するとしましょう。
このとき二項展開の公式を用いて、
\displaystyle (n+1)^p\equiv \sum_{i=0}^{p}{}_pC_{i}n^i\equiv n^p+1+\sum_{i=1}^{p-1}{}_pC_{i}n^i(mod\ p)

いま1\leq i\leq p-1のとき、{}_pC_{i}pの倍数であることが知られています。なぜなら
\displaystyle {}_pC_i=\frac{p!}{i!(p-i)!}

と表されており、p!pの倍数である一方、i!,(p-i)!pの倍数で無いからです。以上より帰納法の仮定を用いれば
(n+1)^p\equiv n^p+1\equiv n+1(mod\ p)

となりn+1の場合も成り立つことが示されました。
npの倍数でないとき、すなわち\gcd(n,p)=1のときは両辺をnで割って
n^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

が示されました。

  • 群の性質を用いるもの

組み換え定理を用います。(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}を考えるならば、a\in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}によって以下の2つの集合が対等であることが分かります。

\{\overline{1},\overline{2},\cdots,\overline{p-1}\}=\{\overline{a},\overline{2a},\cdots,\overline{(p-1)a}\}

これを用いれば
(p-1)!\equiv a\times 2a\times\cdots\times (p-1)a\equiv a^{p-1}(p-1)!(mod\ p)

(p-1)!pの倍数でないので(ウィルソンの定理によると(p-1)!\equiv -1(mod\ p))、両辺を(p-1)!で割ると
a^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

が得られました。

どちらも簡潔な証明で素晴らしいですね。
それでは。

ウィルソンの定理の証明

こんにちは、よねすけです。久々の投稿になります。
今回はウィルソンの定理を二通りで証明したいと思います。

ウィルソンの定理とは、有理素数pを考えたとき、
\begin{equation}
(p-1)!\equiv -1(mod\ p)
\end{equation}
証明方法としては、逆元を用いるものと原始根を用いるものがあります。

  • 逆元を用いた証明

逆元に関する話は前回にも少し書きましたが、ここに改めて記すことにします。
1\leq a\leq p-1なる自然数aに対して、ka\equiv 1(mod\ p)なるk(1\leq k\leq p-1)がただひとつ存在し、\displaystyle k\equiv \frac{1}{a}と書きます。このとき

2,3,4,\cdots,p-3,p-2

p-3個の数字を\displaystyle\left(a_i,\frac{1}{a_i}\right)というペアに分けます。なぜこのようなペアに分けることができるかというと、
\displaystyle a\equiv\frac{1}{a}\Leftrightarrow a^2-1\equiv 0\Leftrightarrow a\equiv\pm1\equiv 1,p-1

となり、この2つははじめから除いてあるからです。よって、
\displaystyle 2\times 3\times 4\times\cdots\times p-2\equiv\prod_{i=1}^{\frac{p-3}{2}}a_i\cdot\frac{1}{a_i}\equiv 1

ゆえに、
(p-1)!\equiv 1\times 1\times (p-1)\equiv -1(mod\ p)

となり、ウィルソンの定理が示されました。

  • 原始根を用いた証明

(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}巡回群になることが知られており、その生成元を原始根と呼びます。(本当の定義は違う気がします。)
生成元の一つを選び、g\in (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}とすると、
(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times}=\{\overline{1},\overline{2},\cdots,\overline{p-1}\}=\{\overline{g^0},\overline{g^1},\cdots,\overline{g^{p-2}}\}
と書けることが分かります。p=2でウィルソンの定理が成り立つのは明らかなので以下ではp>2とします。

\displaystyle (p-1)!\equiv\prod_{i=1}^{p-2}g^i\equiv g^{1+2+\cdots+p-2}\equiv g^{\frac{(p-1)(p-2)}{2}}(mod\ p)

ここで\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv -1(mod\ p)です。なぜなら、
\displaystyle (g^{\frac{p-1}{2}})^2\equiv g^{p-1}\equiv 1(mod\ p)

フェルマーの小定理から分かります。これより\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv \pm 1(mod\ p)となるのですが、いまgは原始根なので\displaystyle g^{\frac{p-1}{2}}\equiv -1(mod p)でなければならないのです。よって
\displaystyle (p-1)!\equiv (g^{\frac{p-1}{2}})^{p-2}\equiv (-1)^{p-2}\equiv -1(mod\ p)

が示されました。(最後にpが奇素数であることを用いました。)

以上です。どちらもとてもおもしろい証明だと思います。
それでは

モジュラ逆数

よねすけです。今回は整数論を少しかじってみるよ。

pを有理素数とし、\gcd(a,p)=1の時、

ax\equiv 1(\mod p)

なる整数xがただひとつ存在することが一般に知られています。(証明はx,x'が上の式を満たすとしてx\equiv x'を示せる。)
このときのx\mod pにおけるaの逆元(モジュラ逆数とも)と言い、x\equiv a^{-1}と書きます。
(競技プログラミングをしている友達がこのことについて質問してきました。競技プログラミングも結構数学を使うんだなあといった印象です。)

まあこれを書いただけじゃ意味が無いんでここでは1問問題を解いてみましょう。(本当はこの逆元を使ってウィルソンの定理を証明するのが良いんでしょうがここでは数オリ(?)の問題を載せます。)

正の整数a
1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{23}=\frac{a}{23!}

をみたす。a13で割った余りを求めよ。

自分の数論の問題集を取り出したらこの問題にマークが付いてたのが懐かしいのぉ〜と思いましたね。もう4年も前ですね笑

早速解いていきましょう。右辺の23!が邪魔なのでこれを払うと

a=23!+\frac{23!}{2}+\cdots+\frac{23!}{23}

となります。右辺の各項は整数で\frac{23!}{13}以外は13で割れるので、
\begin{eqnarray}
a&\equiv&\frac{23!}{13}\\
&\equiv&12!\cdot 14\cdot 15\cdots 23\\
&\equiv&12!\cdot 10!\\
&\equiv&\frac{(12!)^2}{11\cdot 12}\\
&\equiv&\frac{(-1)^2}{(-1)(-2)}\\
&\equiv&2^{-1}\\
&\equiv&7
\end{eqnarray}

となり、答えは7と分かりました。
一応説明しておくと
12!\equiv -1(\mod 13)

としました。これはウィルソンの定理 - Wikipediaを用いました。
あと、
2^{-1}\equiv 7(\mod 13)

としましたが、確かに
2\times7=14\equiv 1(\mod 13)

を満たすので2\mod 13における逆元が7であることが分かりますね。

それでは。